ホーム Days Here all 2026-2-22 家という時間

2026-2-22 家という時間

おとなりの家がなくなっていた。
東京の家に戻ってきたら、
すっかり取り壊されていた。

少し前に家の解体の話を伺っていたので、
わかってはいたけれど、
いざなくなっているのを見ると、
淋しさが込み上げてくる。

おとなりのお宅には、
90歳を過ぎたマダムがお一人で住んでいた。
ご主人が旅立たれてから、もう20年以上経つだろうか。
以来ずっと一人でお住まいになっていたけれど、
2、3年前に自立型の施設に移られた。

バラや寄せ植えの鉢など、
よく手入れをされたお庭はとてもきれいで、
季節ごとに、いつも私たちの目を楽しませてくれていた。

特別親しかったわけではないが、
息子が小さい頃はよく可愛がってくださったり、
手作りのパウンドケーキなどお菓子もよく頂戴した。

ご近所では「口うるさいおばさん」と、
もっぱらの話しだったが、
確かに厳しいところもあったけれど、
どちらかというと「ちゃんと意見が言える」マダムだったように思う。

施設に移られたマダムは、
とてもお元気らしいので、少し安心した。
急に移られてしまったので、
ご挨拶もできなかったのが残念でならない。

マダムが不在になった庭の手入れは、
ご近所の懇意になさっていた方がずっと手入れをされていたので、
バラの花も水仙たちも、
変わらず見ることができていた。

取り壊された家の瓦礫と、
土地の真ん中にポツンとショベルカー。

きれいだった大きなバラの木や、
そのほかの草木なども、
すっかり取り除かれていた。

なんとも淋しい風景だ。

この間までそこにあった家が、
きれいに姿を消している。

家というのは、形だけではなくて、
そこに流れた時間ごと建っているのだと思う。
家族の声や、キッチンからの匂い。
いろんな出来事の記憶をすっかり包んで、
そこに在った。

あの素敵だったバラの花を
もう見ることはない。

来週からは、
別のもう一軒の家の解体も始まるらしい。

私たちの暮らしは、
少しずつ姿を変えながら、
こうして更新されてゆくのだろう。


今日は九州の方では春一番が吹いたという。
東京も風が強く、汗ばむ陽気だった。



** 更新のお知らせメール

毎週水曜日の朝に、
新しく書いた記事たちをメールでお届けします。
読みたいなぁと思った時に、
ゆっくりと開いていただければ幸いです。

お預かりしたアドレスは、更新のお知らせ以外には使いません。
詳細は[プライバシーポリシー]をご確認ください。
配信停止はいつでもできます。