三月。
「うららか」という言葉が、
そのまま空に浮かんでいるような日だった。
陽射しはやわらかく、
風はどこまでも穏やか。
東京の家の庭の辛夷がほころび、
足元には黄色いクロッカスが咲いた。


季節が、またページをめくる。
あまりにも心地よくて、
夫とモカ🐶と車に乗り、
大きな公園へ向かった。
長袖のTシャツ一枚で。
それだけで気分が軽くなる。
休日の公園は家族連れで賑わい、
ボールを追う子どもたちの声があふれている。
芝生に寝転ぶ人、
お弁当を囲む人たち。
寒さから解放されたような、
この気持ち良い春の空気を
胸いっぱいに吸い込む。
ゆっくり公園の奥まで足を運ぶ。
木々の間から、やわらかな光がこぼれている。
冬の間、固くなっていた心まで、
ほぐれていくようだ。
ふと、「北風と太陽」のお話を思い出す。
お日様の力は、
頑ななものたちをそっとゆるめてくれる。
ヨモギや、ハコベも
もう新しい葉をのぞかせている。
モカは落ち葉の匂いを確かめながら、
小さな足で先をどんどん急ぐ。
飛び交うカラスに精一杯吠えてかかる。
ただ歩いているだけだった。
夫とモカと私で。
たわいのない会話をして。
淡い緑の新芽を出したばかりの
柳の枝が風にふわりと揺れている。
