ホーム Days Here all 2026-2-4 怒り

2026-2-4 怒り

私は怒った。
ものすごく腹立たしかった。
そして同時にとても悲しくなった。
この悲しさがどこから来るのか、
それもよくわからない。

ちょっとした事件だった。
小さなこと…というよりは大きく、
かと言って、
ものすごく大事というわけでもなかった。

でも母のその一瞬の行動が、
私の怒りを爆発させた。

「もう、今日は帰るから!」
怒りながら私は言った。

実家で済ませておきたい家事はあらかた終わっていた。
夕食の支度もすっかりできているし、
作り置きのお惣菜もできた。

翌日は週に1度のゴミの収集の日なので、
家中のゴミを集め、
新聞紙は束ね、雑紙や段ボールも束ね、
カンやビンも分別して、
すぐに出せるように玄関に置いておいた。

市の高齢者のサービスで、
通常のゴミ出しが困難な家は、
週に1度、全てのゴミを玄関先で収集してくれるのだ。

母は、
「あら、何で?お茶にしましょうよ」
「何をそんなにプンプンしてるの?」
とキョトンとした様子で言う。

つい今さっきのことなど、
もう覚えていないのだ。
自分がやったことなど
これっぽっちも覚えていない。
腹立たしいこと極まりない。

何が起きたかを
説明しなければいけないことにも、
余計に腹が立った。

母は困惑して泣きそうになっていた。
今の母にとっては身に覚えがないのだから。
そして娘は怒っている。

そんな母を置いて
私は振り返りもせずに、
さっさと家を出た。

こんなことはこの約4年間一度もない。

帰り道、車の運転中、
怒りながら悶々としていた。

母がとった行動に対しての怒り、
1分前のことも忘れてしまうことへの怒り、
次々と母へのいろんな怒りが噴き出してくる。
怒りを露わにした自分にも苛立つ。
それと同時にどこからか、
悲しい気持ちも込み上げてくる。

認知症とはこういうもなのだろう。
怒りは、行き場所がなく
ぶつける場所もない。

もうなんだか自分でもよくわからない。
ぼんやり見ていた赤信号が青に変わって、
むりやり押し出されるように、
仕方なくゆっくりアクセルを踏むしかなかった。

本当は
ただ泣きたかった。