ホーム Days Here 日々の暮らし 手の跡/プラダを着た悪魔2

手の跡/プラダを着た悪魔2

美容室に行ったら、
雑誌がタブレットに変わっていた。

普段、雑誌を買うことはほとんどないので、
美容室で雑誌を読む時間を、
私はひそかに楽しみにしていた。

美容室にとっては、
雑誌を買ったり処分したりする手間も減るし、
保管場所に困ることもない。

読める種類も圧倒的に増えた。
お客様にとっても便利なのだろう。

紙媒体からタブレットへ。
それも時代の流れだ。

けれど、
心のどこかが少しだけ、もやっとした。

美容室のあと、映画館へ向かった。

公開前から観たいと思っていた、
『プラダを着た悪魔2』を観るためだ。

内容には触れないようにするけれど、
舞台は『RUNWAY』というファッション雑誌をめぐる物語だ。

時代の流れの中で、
“雑誌”という媒体そのものが存続の危機にある。

情報はスマホの中にあり、
雑誌もデジタルで読める。

ついさっき、
美容室で体験してきたばかりだ。

さらに、優れたAIの登場によって、
編集の仕事まで急速に効率化され、
人の手がどんどん減っていく。

『RUNWAY』も、その波の中にいた。

映画を観ながら、
私はずっと、
雑誌を作る人たちの熱量を見ていた。

一冊のために奔走する。
「これを届けたい」と必死に作っている。

そこにあるのは情熱だ。
それはどれだけAIが優れていようとも、
その代わりにはなれない。

ページをめくる時の重みや、
紙の匂い、
印刷の色、
誰かの美意識が宿ったレイアウト。

そこには確かに
「人の手の跡」が残っている。


映画館を出ると、夕方になっていた。
私は本屋へ向かった。