実家の梅が見頃になってきた。
両親はテレビのフィギュアスケートに、
釘付けになっていた。
Mother is.
「綺麗ね〜、
軸がブレないわね〜
回転のスピードが速い!!」
と、さながら解説者のようだった。
りくりゅうペアのフリーの演技が
本当に素晴らしくて、涙が溢れた。
高橋成美さんの解説が一層涙を誘った。
世の中の方たちも、こんなに感動しているのは、
あの演技の全てに愛が溢れていたからだろう。
本当にこれからもずっと語り継がれる、
歴史と心に残る演技だった。
小学生の頃、
フィギュアスケートを習っていたことがあった。
あの頃はまだ夏はリンクがなく、
練習は秋から夏前くらいまでだったろうか。
大会を目指すとか、そんなのではなくて、
ただただ楽しくて習っていたが、
中学に入って部活との兼ね合いもあって、
やめたような気がする。
その影響で母もフィギュアスケートを始め、
なんと「準指導員」という資格まで取ってしまい、
しばらくは小さなスケーターたちの指導をしていたように思う。
小さい時から我が家ではフィギュアスケートを見るのが好きで、テレビで放送される時は欠かさず見ていた。
瞬間、瞬間、目の前に繰り出される技の数々や、
流れるような美しいスケーティングに、
食い入るようにテレビの画面をみんなで見ていた。
当時、カルピスのCMにアメリカのスケーターの、
ジャネット・リンさんが
真っ白な氷上で、真っ白な衣装でくるくると回る姿が映し出されていて、
彼女の笑顔がとても可愛らしくて素敵だった。
このCMの影響がとても大きかったと思う。
それからの渡部絵美さん、佐野稔さん。
今、思い出したけれど、
佐野さんと言えば、お恥ずかしながら
佐野さんにファンレターを出したことがあった。
しかもお返事を頂戴してとても感動したのだった。
相当しばらくの間、学校で使う下敷きの間に、
彼のサインを入れて大事にしていたものだった。
(そのサインは今は見当たらない。)
今ではごく当たり前の技になっている
「ビールマン・スピン」も、
デニス・ビールマンさんがやったのを初めて見た時は、
彼女の身体はどうなってしまっているんだろう!?と
驚いて見ていたのを、鮮明に覚えている。
あれから何十年も経った。
リンクの氷も、選手も、時代も変わったけれど、
母の目の輝きは、あの頃と少しも変わらない。
母は今でもスケートを楽しんでいる。
テレビの前で、
あの頃スケーティングをしている時の
エッジが氷の上を滑っていくのを感じているのだろう。
好きなものは、
年齢を重ねても、
ちゃんと心の中に残っているのだと思う。
テレビの前で
「軸がブレないわね」と言う母の声の奥には、
氷の感触を知っている人だけが持つ、
確かな記憶がある。
あの白いリンクの上には、
あの頃のままの時間が、
今も静かに重なり続けている。
