5月らしい爽やかな緑が、
外に出るように誘ってきたので一人で散歩に出かけた。
手ぶらで。
ハンカチだけをポケットに入れて、
お散歩用の小さなバッグもスマホも持たずに。
キラキラと木漏れ日の光が揺れて、
風がすっと通り抜けてゆく。
軽い。
いつもより何か軽やかだ。
スマホがないだけで、
「確認しなければ」が消えていた。
写真を撮らなくてもいい。
誰かに伝えなくてもいい。
足元では名も知らない草花が揺れ、
鳥たちが鳴いている。
そんな小さなことに、
心が静かに反応している。
持っていないというのは、
不安なことだと思っていた。
そういえば、以前の私のバッグといったら、
とても大きくて重たかった。
予備のお財布とか、
イヤホンが2つとか、
リップが3本入っているとか。
忘れたら困るから忘れても大丈夫なように、
スペアはいたるところに入っていた。
ある時友人に聞かれた。
「で、それ使ったことあるの?」と。
「んー、ないね…」
たくさん持っていると安心できると思っていたのに、
何も持たずに歩いている今のほうが、
軽やかでずっと満たされている。
予定も、
情報も、
「こうしなければ」という考えも少ないほど、
身体の奥に風が通る。
自分の持ち物全部が、
スーツケースひとつに収まるくらいになればいいのになと、
木々の隙間からこぼれ落ちる光を見ていた。
Just one handkerchief

Category.