Home Days Here. Daily life 「お疲れさま」と花が言う

「お疲れさま」と花が言う

フロントガラスに激しい雨が、
叩きつけるように降り、
ワイパーが全力でそれを拭っていた。

反対車線を走るトラックのヘッドライトが、
いつもより眩しく見えて、
視界をさらに見えづらくした。

ブレーキをゆっくりと踏み、車を停めた。
ワイパーはまだ一生懸命に雨を拭っている。

その向こうにサービスエリアの灯りが、
雨に反射して滲むように揺れていた。

はぁ…と自然と息が漏れる。
ステアリングから手を離し、エンジンを切った。

Oh dear.
すごい雨だった。

運転は大変だったけれど、
「春だな」と心の中で、ふふっと笑う。
多分、もう雪は降らない。

思い切って車から飛び出す。
傘を開く間にも、雨は容赦ない。

ビチャ!と、水たまりに足を突っ込んで、
やってしまった!と思いながら、
トイレへと駆け込んだ。

用を済ませて、手を洗う。

ふと鏡の横の花に目が留まる。

チューリップにガーベラ、
いくつかの花が、
ありふれたガラスの花瓶に、
無造作に生けられている。

ガーベラと目が合った。

「お疲れさま」

そう言われたような気がして、
張っていた肩の力が、すっと緩む。



この頃のSAやPAのトイレには、
よく花が飾られている。

季節感のあるディスプレイや、
「お気をつけて」の小さなメッセージがあったり。

トイレそのものも、
いつもきれいに整えられている。

清掃してくださっている方々には、
お仕事がどれだけ大変か、
想像するだけで頭が下がる。

さりげなく飾られた花は、
それだけでその場の空気をやわらかくする。

自然と、もう少し丁寧に使おう…と思う。



運転で疲れた時、
あの花の前に立つと、何かがほどけてゆく。

今夜もそうだった。


ただ感謝。