それは急に決まった。
八月の始め、ケアマネさんがみえた時に、
「この間見学したデイサービスに空きが出たんですが、
行かれてみますか?」 と聞かれた。
五月に見学した施設だ。
見学中は乗り気だったのに、
帰宅すると行くのを拒んだ。
「女はねぇ、そうそう遊んでなんかいられないのよ」と。
それなのに。
「ぜひ行きたいわ」と母。
どのお口が言うのだろう?
気の変わらないうちに話を進め、契約した。
そして初日。
九時過ぎ、私は実家へ着いた。
母はもう準備万端、 お化粧もバッチリ、
すぐにでも出発できそうだった。
仕上げに、鏡では見えない頭の後ろの髪にブラシを入れてあげた。
お迎えは十時半。
それまでの時間、母はずっと喋っていた。
「どんなことやるのかしらね?
お母さんは、カルチャーセンターとかにも行ってたから、
そういう所は慣れてるのよ」
デイサービスが期待に応えてくれるよう祈った。
お迎えの車が来た。
「行ってくるわぁ〜」
手を振りながら、出かけて行った。
残った父と私。
部屋の中に静かな時間が流れた。
父はいつもの母の小言や罵倒から離れて、やれやれという様子。
私は母と言い争うことなく、存分に洗濯機を回す。
父とお茶を飲みながら、ゆっくり話をする。
耳の遠い父と話すときは、こちらの声が大きくなる。
母に聞かれたくない話は、普段なかなかできないでいた。
こんな時間が欲しかった。
六時過ぎ、母が帰宅した。
少し紅潮して満足気な顔をしていた。
玄関で「おかえり、楽しかった?」と声をかけた。
「今日は色々やったのよ」
連絡帳には、マシンを使った運動や、風船のゲームと書いてある。
夕食の支度をしながら、何でもない話をした。
「すごい美味しそうな匂いがするわ。
帰ってきてすぐ食べられるって、
こういうの良いわねぇ」と母。それから、
「それで、りすちゃん、いつ来たの?」
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