今日の森から

のこったもの

それはモニュメントのように、
何かのオブジェのように、
または遺跡のように、
以前と変わらない姿でそこに遺されていた。
昔の短大校舎入り口の階段と柱だ。


私たちが通った短大は二〇〇〇年代初めに廃校になった。
校舎はその後、何かに使われていたのか、いなかったのかはわからないが、取り壊されたのは数年前のことだ。

大学に勤めている友人から、「キャンパスもだいぶ昔とは変わったよ」と聞いていた。
そこで今でも仲良くしている当時の仲間たちで、久しぶりに母校を訪れた。


正門からの風景は随分と変わっていた。
卒業して四十年。
門の近くにあった桜並木は、すっかり伐られていた。
私たちが還暦を過ぎたのだから、桜の木も年を取る。
残っていた桜の、つるりとしていた幹は、太く、ごつごつと立派になっていた。

古い校舎のほとんどは建て替えられ、
残ったものも外壁が直されていた。
どこを見ても古さは感じられない。


坂を少し上がると、短大校舎があったところには、
入り口の階段と柱だけが残っていた。
何の説明板も碑もなく、
ただそこにあった。

今の学生たちは知っているのだろうか?
かつてここに短大があったことを。
この前を通る時に何か思うのだろうか?
彼らにとっては多分、関係のないことだ。

私たちにとっては跡形もなく無くなってしまうよりは、
良かったのかもしれない。

その階段を上ってみた。
丘の上を秋の風が吹き抜けていった。
周りの緑は昔と変わらないが、
ここに女子学生の笑い声はもう聞こえない。




私たちが帰る頃、ちょうど下校の時間と重なった。
駅へ向かう学生たちの間からは、笑い声がこぼれていた。

私たちもかつて、そうだったように。